特定非営利活動法人シェア

面谷さとみ

学生の頃から発展途上国に数回ボランティアなどで行きながら、将来国際協力に携わろうとしている者として考えさせられる経験がたくさんありましたが、今回初めて助産師として保健医療系プロジェクトに携わらせていただき、やはりそれまでとは違った気付きや学びが多くあったように思います。NGOのプロジェクトの運営、そこで活躍する看護職の仕事の実際を知ることはもちろん、言葉の壁をはじめとしたコミュニケーションの難しさや、目の前に重度の栄養失調の子どもがいるのにすぐに病院に連れていけないくやしさ、無力さ、日本では考えられない医療が行われていることへのもどかしさなど・・・。本当に様々な経験をさせていただきましたが、カンボジアに行く前の地域医療現場から振り返って、大切にしたいと感じた学びのうち2つをご報告したいと思います。

1つは、助産師として、自分がケアする対象とはどういった人物なのか、どういったニーズが存在するのかを考え、その上でケアを実施することの大切さを、改めて実感したことです。とても基本的なことですが、この“どういった人物なのか”の中で、“どういった地域で生活する人物なのか”が含まれて考えるようになったことが大きな学びだったと思います。日本で、学生や新人のときに学ぶのは“個別性”で、ケアをする相手の性格や生育歴、家族背景などの情報から、その“個人”に焦点を当てる思考を鍛えられていたように思います。発展途上国に行くと、もちろん国自体が違うので、対象がどのような生活をしているか、それはどんな地域で、そこにはどんな文化や歴史が存在するのかを理解した上で関わることが求められます。

今回のプロジェクトに携わるにあたり、助産師として、母乳に関する知識・技術の提供という役割が与えられていました。母乳といっても、どこに焦点を当てて、どういったニーズがあるのかを考えてから行動を起こす必要があります。低体重の子どもと母乳の関係を考えた時、そこには日本で働いている時には入ってこない“文化的な背景“のカテゴリが入り、この背景の理解がされることの重要性を感じ、考えながら行動をとるようにしていました。私は今回インターンという形で入っていたため、身近にアドバイスをしていただける専門家の方がおり、こうしたステップを踏むのにとても助けられました。

自分がアプローチするのはどのような地域なのか、カンボジアに行く前の徳之島での勤務経験においても、また以前に関西と関東の病院で勤務をした経験の中でも考えさせられていました。
同じ日本でもやはり文化や環境の違いは感じましたし、そうした中で母親や家族に対し同じような指導をしていてはダメだなと感じることがよくあったように思います。

学びのもう1つは、こちらも基本ですが、継続して関わることの大切さです。今回は、プロジェクト活動の1つである乳幼児健診に主に参加させていただいていたのですが、短くても3ヶ月に1度の実施だったので、同じお母さんや赤ちゃんに会えるチャンスはほとんどない状況でした。けれども、たまたま1ヶ月毎に健診を実施していた村に関わり、産後間もない時期と、その1ヶ月後、2ヶ月後と、約2ヵ月半の研修の間で3度同じ親子に会うことができました。生後間もない時期に出会ったその初産婦さんは、授乳がうまくいかないと訴え、赤ちゃんの抱っこもまだぎこちない印象でした。人見知りなのか、あまり表情の変わらないお母さんでしたが、授乳の方法を伝えてそれができたときの穏やかな表情が印象的でした。
そのお母さんが、1ヶ月後、2ヶ月後と会っていくと、赤ちゃんの世話をする手つきはもちろん、自信をつけていっていることが分かる表情の変化を感じました。何より母乳育児がとても順調で、体重増加が目立って良好だったことは、産後早期のアプローチの大切さを再認識でき、本当にうれしかったです。こうした変化を見ることができた経験は非常に貴重なものでしたし、それまでの2週間程度の短期間では得ることのできなかったものです。やはり専門職として地域に関わるのであれば、こうした変化に気付きながらアプローチできるような、長期での活動がしたいと感じています。

徳之島での研修も残りわずかとなりました。
地域の様々なことが見えてきましたし、海外研修を終えてからは、“自分が何をしたいのか、するのか”だけでなく“地域の人のために”いち助産師としてどう動くのか”という気持ちが強まり、日々仕事に取り組んでいるように思います。
短い期間の研修ではありますが、こうした基本的な姿勢といいますか、大切にしたいと考えていたことをまた改めて感じたり、考えたりすることで助産師としての経験を深めていっているような、そんな期間になっているなと振り返って感じています。