ザンビア訪問

2011年10月 14~23日の9日間、スタッフの加藤琢真、安東久雄、森岡翠の、GLOWの海外研修フィールド候補地であるザンビア共和国訪問の報告をさせて頂きます。 研修内容については、決定次第お伝えてしていきますが、今回は現地でお世話なったNPO法人TICOの事業地とJICAのSHIMAプロジェクトについ て、そしてザンビアという国について紹介していきたいと思います。

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今回の旅の目的は、GLOWの海外研修フィールドの候補として、ザンビアの都市部や農村部の保健医療、保健システムや医療施設の現状を把握すること、また現地との信頼関係を構築することです。実際には現地で活動するNPO法人TICO(http://www.tico.or.jp/) などのご協力を受け、病院、市や郡の保健局や、TICOの活動フィールドを訪問させて頂きました。実際に訪問させて頂いた施設は数多く伝えきれませんの で、今回はTICOのモンボシ地区のプロジェクト関連およびJICA-SHIMAプロジェクトに絞ってお伝えさせて頂きます。

1. NPO法人TICO「地域住民が支える安全な妊娠/出産の支援事業」 中央州チサンバ郡モンボシ地区他 にも事業地を持たれていますが、今回は農村部保健医療改善事業を実施している、モンボシ地区に伺いました。こちらの地区では以前より、ヘルスポストの建設 から、コミュニティースクール支援まで幅広く活動されており、現在は「地域住民が支える安全な妊娠/出産の支援事業」が実施されていました。四輪駆動車で、首都から2時間弱で到着したモンボシ地区は、路面の状況が非常に悪く、車両が通行できる道は非常に限られておりました。さらに人口密度は低 く、長年、30キロほど離れた町にしか診療所がない状況でしたが、TICOがヘルスポストを建設することで、住民の医療へのアクセスは大きく改善されました。
しかしヘルスポストの機能や搬送体制を考慮すると課題も多く、TICOでは新たな取り組みが考案されており、医療アクセスの問題が根深いことを実感し ました。草葺きの民家が点在し、とうもろこし畑が多かったですが、中には白人経営者による大規模農園もあり、そこに従事している住民はより過酷な生活を 送っており、事業地の中でもアプローチが困難な層であることを伺いました。

ザンビア訪問

ザンビアの保健医療施設は、都心部には大学病院(UTH)が1 つ、そして一般病院が主にプライベートを中心にあり、地方には公的な一般病院、ヘルスセンター、ヘルスポストが拡がっています。
しかし、いずれの施設も医 療従事者がかなり不足しており、モンボシ地区を中心に考えてみると、最寄りで手術ができ、医者がいるのが、車でも1時間ほどかかるリテタ病院のみ。ここ は、医師3名で回しているのですが、それより規模の小さなヘルスセンターには、クリニカルオフィサーが1人、看護師が6名です。その他、モンボシ地区にあ るモンボシヘルスポストは看護師が1名のみの体制となっています。
しかもこちらはヘルスポストの機能として地域に訪問することもあります。実際に私たち が訪問した際には麻疹が発生したため、不在でした。こうした医療人材の極度の不足に対してザンビアでは、CHWの育成を政策として展開し ています。具体的には、地域のボランティアへの研修などを行うことで、一定の知識を教育し、彼らにヘルスポストでの簡単な薬の処方や検査などを担わせてい ました。こうしたCHWによる積極的な業務の実施は、医療過疎の地方では大きな役割を担っていました。ヘルスポストには診療町の住民がずらっと列をなし、 信頼されていることや頼るところがここしかないことが伝わってきました。

そしてこのヘルスポスト自体、半分が分娩室となっていますが、他に病室がなく、遠方の妊婦が陣痛発来してからヘルスポストを目指してもお産に間に合わないことや、道半ばで出産してしまうことがあるため、TICOはヘル スポストの隣に「お産を待つ家」を建築していました。
予定日近くになったらこの家に宿泊し、出来るだけ確実な施設分娩を促すことを目指しているそうです。もちろん、ただ建てるだけでなく、施設分娩を増やすための施策としても『安全なお産支援グループ』SMAGを養成し、目標である妊産婦死亡率10%低下のために、妊婦健診の徹底やお産の危険兆候のなどの教育を実施できるようにしています。

妊産婦死亡率はザンビアの保健指標の中でも改善のスピードが遅く、絶対的な医療従事者不足の中で改善を図るべく様々なアプローチを実施していたのが、印象に残ります。そのアプローチが現地ボランティアスタッフを尊重しつつ、エンパワメントしており、ザンビアの地方社会のリソースを活かした、モンボシ地区で長 く活動を行ってきたからこそできる事業であると感じました。
【参考 Website】http://www.tico.or.jp/aboutTICO/activity/zambia/com_health/safe_motherhood.html
http://www.jica.go.jp/partner/kusanone/partner/zam_04.html

ザンビア訪問

2. JICA SHIMAプロジェクト
次に、JICAの事業である、技術協力プロジェクト「HIV/エイズケアサービス管理展開プロジェクト(SHIMA)」の事業地にも伺ったので、報告させて頂きます。
今回は、本事業で先行技術協力プロジェクトによりモバイルARTサービスが効果的と判断したザンビア政府が、「モバイルART/PMTCT/VCTサービス国家ガイドライン」を策定したため、これに沿って新規事業地にモバイルARTサービスの定着を図っています。今回は、長期専門家である独立行政法人 国立国際医療研究センター宮野真輔先生に同行して頂き、ムンブワ郡ルンゴベヘルスセンター、ムンブワ郡病院を訪問 しました。JICA SHIMAプロジェクトでは2週間に1回の頻度でムンブワ郡病院からヘルスセンター(以下、HC)にクリニカルオフィサー(以下CO)と看護師(以下Ns)が派遣されます。モバイルARTを行う意義は、郡病院からHCに対して、人材と技術をサポートすることで、住民のアクセスが比較的容易な身近な医療 機関でARTサービスを受けられるようにすることであります。
ムンブワ郡の23のHCのうち12のHCでモバイルARTを実施しており、その内5つのHC では郡病院からCO、Nsを派遣せず、HCの主にCHWだけで独立してARTサービスを実施できています。ルンゴベHCはその内の一つです。

実際にルンゴベヘルスセンターでは、CHWが業務を実施しているところを拝見させて頂きましたが、住民目線で説明が非常に丁寧でした。豊富な知識を持ち、十分な指導ができている印象でありました。また、ヘルスセンターの薬品庫には、ARVが非常に豊富にあり、一般的な鎮痛薬や抗菌薬よりも多く、世界的な HIV/AIDSへの投資がこうした地域にまで至っていると感じました。それはモバイルARTサービスがあってのことであり、その効果をまさに目の当たりにしました。
またルンゴベHCがカバーする地域でのHIV/AIDSに対するスティグマはほとんど存在しないということです。HIV感染 者が治療を受けるのはマラリア感染者がマラリアの治療を受けるのと同じくらい自然なことであると考えられているとも。HIV/AIDSの治療が一般 化することにより、患者自身も地域においてノーマライズされたのだと思います。時として、周囲からのスティグマよりも自分自身に対するスティグマ、セルフスティグマが、近隣のHCを受診するのを阻害することもあるとの話もありました。

このようにモバイルARTサービスの普及は、治療のみならず、啓発的な要素も生み出します。
なかなか手が行き届かない南部アフリカの地方に対する有効なアプローチ手段として、今後も注目させて頂きたいと思います。
【参考Website】http://www.jica.go.jp/zambia/activities/project/01.html
http://www.ncgm.go.jp/kyokuhp/publication/nenpou/h21/k02_zambia.pdf

ザンビア訪問

チボンボ郡に続く道沿いの草木
一方、欧米や南アフリカ系の大規模な商業農場には、水の散布システムが整っており、豊富な水分によって作物が青々と育っていました。商業農場の経営には色々と問題もあるようですが、限られた水資源の配分と灌漑システムの重要さを痛感しました。またコミュニティレベルでは様々なIGA(収入向上活動)が思考されており、中でもザンビアの主食であるシマの原料(メイズ:とうもろこし)を挽いて、粉にする機械の導入は、現金収入に結び付いているとのこと。
1食1個でもだいぶお腹が膨れるシマを、ザンビアの人々は5,6個も食べられるというのですから、需要も大きいのでしょう。糖尿病もけっこう多いようですので、大量のシマに油っぽいおかず、甘い飲み物といったバランスの悪い食事は心配なんですが…

シマwithチキン(ゼブラゲストハウス)
ちょっぴりシャイで、靴磨きが大好きで、ボランティア精神に溢れたザンビアの人々に囲まれ、GLOWもたくましく成長していきます!
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ザンビア共和国 基礎情報
【一般情報】・面積:752.61千平方キロメートル(日本の約2倍)・人口:1,293万人・首都:ルカサ(人口約170万人)・民族:73部族・言語:英語(公用語)、ベンバ語、ニャンジァ語、トンガ語・宗教:キリスト教
【保健指標】■母子保健・妊娠前 若年出産率(15-19歳1000人あたり):151/家族計画ニーズへの非適合率(%):27/避妊普及率(%):41/・妊娠中:1回/4回以上の産前検診受診率(%):94/60/・産後:産後検診受診率(%):39
■HIV/AIDS 有病率(%)の男女差 男性:12.3/女性:16.1
有病率(%)の地域差 都市:23.1(2001)→19.7(2007)/地方:10.8(2001)→10.3(2007)